風の通り路
       2004.12.25 36号
眩い黄葉、桂の樹林
雪を被った全山紅葉南アルプス林道北沢峠
コースタイム
風路8:00=長谷村バス営業所9:40着・出発10:20=北沢峠11:40(昼食・散策50分)−
南アルプス林道下山ウォーク(30分)=バス営業所14:00
   歩行時間約50分

 10月27日
「北沢峠までの紅葉を見に行きませんか」とペンションたん歩歩の粟田さんから誘われました。
 南アルプススーパー林道はマイカー禁止で村営のバスで行かなくてはなりません。長野県側(戸台から北沢峠)は長谷村村営バス、山梨県側(広河原から北沢峠)は芦安村村営バスが走っています。戸台からの午前最後の1020分の便に乗るために、小淵沢を朝8時に出発しました。

 国道20号を走り、杖突峠を越えて高遠城址脇を抜け、南進。長谷村営バスの営業所に着きました。南アルプスの名峰・東駒ケ岳(長野県側では甲斐駒ケ岳を、東駒ケ岳と呼んでいます)の麓のバス営業所付近はさすがに肌寒い。行く手には南アルプスの高峰がどっしりと横たわっています。

黄葉の中バスは行く 
 往復のチケットを買ってバスを待ちます。乗客は私達と別のグループの2組だけでした。戸台川沿いを10数分走るとスーパー林道入り口の戸台大橋のゲート。この先一般車両は通行止めです。

 バスは小黒川に懸かる戸台大橋を渡ってスーパー林道に入ります。ここから標高2千メートルを越える北沢峠まで、仙丈ケ岳に源を発する戸台川の深い渓谷を見下ろしながらグングン高度を上げていきます。渓谷の斜面はシラカバ、カツラ、ナラなどが鮮やかに黄葉しています。特にカツラはこれまでに見てきた黄葉のなかで一番見事と思いました。 「黄色ってこんなに鮮やかになるのか!」 
 所々にカエデやナナカマドの紅と常緑樹の緑が綯い混ざって錦織りなすという風情。しばらく走ると後方に北アルプスが望めるようになってきました。正面に雲の切れ間から甲斐駒ケ岳、鋸岳がうっすらと稜線を現してきます。 


渓谷の斜面覆う紅・黄葉と雪
 「あれッ! 雪じゃないの」。深い渓谷の全斜面を覆う樹林の紅・黄葉の木々の上に雪が積もって、白く輝いています。バスが林道のカーブを曲がる度に「うわーッ! 」と歓声! バスの窓から写真を撮る人、運転手さんの横に出て撮る人、皆興奮状態です。中には「運転手さんストップ!」などと叫ぶ人まで出る始末。運転手さんも半ばあきらめ顔。「これでは、定刻で北沢峠に着くのは無理。これからしばらく放し飼(!)にします」と事務所に連絡して私達を降ろしてくれました。
 思いもかけぬ機会を貰って、壮大な山々と深い谷、見渡す限りの雪と紅・黄葉の世界に浸ります。再びバスに乗り、渓谷沿いの林道から樹林の中の道に入ると、コメツガ等緑の木々が多くなってきました。うっすらと雪を被っている様はまるでクリスマス! まもなく北沢峠に着きました。
 北沢峠バス停前の長衛荘で昼食。私達は天ぷらうどんを頂きました。体も温まり、お腹が一杯になったところで雪の峠付近を散策。

霧のベールの中のウォーキング
 午後1時発のバスで戸台へ帰る予定でしたが、せっかくここまで来て、ほとんど歩かないのはもったいない、ということで定刻より30分程前に出発することにしました。先に林道を歩いて戻り、途中でバスに拾ってもらおう、という作戦です。
 樹林の中の道はトウヒやシラビソなどの大木が鬱蒼と茂っていて、その枝々に雪がついています。あたりは冷気と暖気のせいでしょうか、樹林全体がうっすらとモヤがかかたように霞んで幻想的です。樹林から抜け出た地点では、正面に深い谷と南アルプスの峰々が迫っていて、その斜面全体を覆う雪を被った黄葉したカラマツの木々。夢のような世界です。もっともっと歩きたい気持ちでしたが、早くもバスが後から追いついて来ました。
 



 バスには長衛荘のお母さんも乗っていて、「こんな景色は何十年通ってきたけど初めてだよ」と話していました。
 全山紅葉の渓谷沿いの林道をグングン下って、バス営業所に午後2時過ぎに到着。

おっ!ここは入笠山
 帰りは、戸台大橋方面へ向かい、橋を渡らずに直進して小黒川沿いの黒河内林道を走ります。戸台大橋から先は砂利道のでこぼこ道です。
 渓流沿いの道なので、ここもまた紅葉が見事。小1時間で樹林を抜けると広々とした牧草地が広がり、さらに進むとどこか見覚えのある風景、建物の屋上に天体観測のドームが目印のマナスル山荘が見えてきました。私達が何回も行っている入笠山の麓に出たのです。入笠山のカラマツの黄葉も真っ盛りでした。
 紅葉の木々の上に降り積もった雪。こんな光景はこれから又見ることができるかどうか・・・。本当に素晴らしい一日でした。
 山歩きを目指す方にはちょっともの足りないかも知れませんが、そんな気分を吹き飛ばしてくれる山と渓谷のコースでした。足に自信の無い方でも大丈夫ですよ!