八ヶ岳・小淵沢 ペンション風路の通信

風の通り路2005.3.15 37号

日本の背骨分水嶺を歩く
石ッコツ〜信州峠スノーシューハイク

コースタイム
風路8:30=JR野辺山駅9:00=出発地点9:20・出発9:50−11:30(昼食30分)−
石ッコツ山頂12:45−信州峠14:10
          歩行時間約3時間30分

2月4日
 隣の大泉村のロッジ「山旅」の長沢さんが、「ヤクボの頭」という山へスノーシューで登る企画を立ててくれました。長沢さんは八ヶ岳界隈のあまり知られていない藪山登山を企画している山男で、私達も以前から「一度参加したい」と思っていました。
 集合場所のJR・小海線の野辺山駅に着くと、集まっているのはいかにも山男・山女と思しき面々。「山旅さんの山行はいつも藪コギ、岩登りなど道なき道で、楽しい」というツワモノばかりで、早くも腰が引ける私達でした。
 今日はヤクボの頭は雪が深くて登山口まで近付けそうもないので、石ッコツに変更します」とのこと。「ヤクボの頭も知らなかったけど、石ッコツっていったい何?」・・・。渡された地図に書かれているのは川上村、信州峠、南沢の3つであとは標高を示す数字が書き込まれているだけです。

 野辺山駅を出発、駅の北側の踏切を渡って川上村の方向へ。この辺りは高原野菜の有数の産地で広々とした畑が広がって、どこまでも続く畑の向うには奥秩父の山々、反対側には八ヶ岳が聳えています。数日前に降った雪がまだたくさん残っていて一面の銀世界。しばらく走ると信州峠への分岐の標識が見えてきました。
 信州峠へ向かってしばらく走り、途中の農道を左折、この先に歩き出す地点がありました。そこで一行を降ろして、帰りのために1台の車を信州峠に停めてきました。 

北は千曲川から日本海へ南は塩川から太平洋へ 

 スノーシューを履いて、さあ出発。雪がかなり深く、フカフカの気持ちの良い道でした。10数分歩くと大きな貯水池に出ました。池は氷結していて、その上に一面雪が積もっています。池の周りを四分の一周ほど歩き、池の奥の建物の脇から林道の登りに入りました。
 周りは葉の落ちたカラマツやナラ、ツツジなどの林の中、下は一面の雪の斜面です。長沢さんの「こっちの方向へ」という指示に従って黙々と登ります。しばらく登りが続き、すこし広い雪原にでました。
 「このあたりが日本の背骨と言われている所で、分水嶺です。ここから北側に落ちた雨水は千曲川に流れて、その先で信濃川になって日本海へ流れていきます。ここから南側に落ちた雨水は塩川を経て富士川に流れ、太平洋に行き着きます」
 「この辺りが県境になっていて、その辺は山梨県、こっちが長野県かな?」
 県境に沿ってしばらく前に赤いテープを木に付けて歩いたそうです。長沢さんの説明の後、長野県と山梨県にまたがって?記念撮影。

山梨県と長野県の県境のあたりで小休止。 県境に沿って赤いテープが付けてあります。

正面に八ヶ岳、思わず歓声!

 しばらく急登で息が上がります。「この登りを越えると見晴らしのよいところへでますから、そこでお昼にしましょう」「お昼ッ!」俄然元気が出てきた私達です。樹林の斜面を登りきると思わず歓声。「わぉー!」言われた通り、正面に雪をかぶった八ヶ岳が姿を現しました。稜線はすこし広い平らな広場のようになっていて、八ヶ岳の手前には横尾山、振り返ると木々の間から特徴のある瑞山が望めました。
 お昼の広場の稜線を辿っていくと一つのピークが見えます。小さなピークですがその頂きは大きな岩が重なり合って、険しそうな山容です。
 「あれが石ッコツです。山頂を踏まずに巻いて信州峠方面に降りますか?」という長沢さんの言葉に、内心は「山頂はきつそうだから、できれば巻き道で行きたいな・・・」と思っていました。でも参加者達は即座に「行きましょう」ときっぱり。お昼も早めに済ますと石ッコツ山頂へ向かって歩き始めています。
急坂をしばらく登ると素晴らしい光景が目に入る。ここで昼食。

えっ、ここを登るんですか!

 ランチを食べた見晴らしのよい広場から稜線を辿っていくと、段々登りの斜度が急になってきます。山頂が近づいてくると、岩や木々にしがみつきながら登っていきます。スノーシューを履いているので、狭い急な岩場は登るのがとても大変です。
 長沢さんがザイルを岩場の上の太い木の幹にしばって垂らしてくれ、「このザイルを伝って登ってください」と声をかけます。最初の数人はザイルを伝いながら岩壁を乗り越えて登っていきました。腕の力が弱い私にはこうした登りは大の苦手。
 「ひぇぇーーー」スノーシューで足場を確保できず、体がズリズリと下がってしまいます。
 「スノーシューを脱いで、ザイルを腰に巻いて」テキパキと指示され、そのとおりにして上から引き上げてもらい、何とか垂直の岩場を乗り越えました。岩を乗り越えたところが狭い山頂でした。登ってしまえばこっちのものです。山頂の岩場で涼しい顔で記念写真におさまりました。
 急斜面は山頂を下りるときにも待っています。でも、山頂から反対側への下りの急斜面はスノーシューが滑るのを注意して下りれば、思ったほどたいへんではなく助かりました。(ちょっと強気・・・)
 難所は越えました。あとは数回のアップダウンを繰り返していくと、木々の間から信州峠の向うに見覚えのある横尾山が見えてきました。ゴールの信州峠はもうすぐです。
 先に峠に停めてあった車が見えてきました。
 石ッコツはスノーシューではちょっと登りづらいところがありましたが、全コースが色々な広葉樹林に囲まれているので、新緑の季節、紅葉の季節など、雪のないときもなかなか赴き深いコースと思いました。 
 日本の背骨に沿って歩く!そんな感慨を抱きながら歩いた山行でした。
 さっき泣きが入ったのはもうすっかり忘れて、「いい山行だったなぁ・・・」と充実感に浸っている私でした!