「家族を想うとき」
パンフレットに書かれた上西充子さんの文の最初の2行。
この映画に救いはあるだろうか、希望は息づいているだろうか。
見終えた後に、そう問い直したくなる。
韓国映画「パラサイト 半地下の家族」は格差社会を描いてはいても、エンターテイメントとしてハラハラドキドキの展開に「面白かった」と思えたけど、この映画はあまりにも正面からイギリスの今の社会の問題を描き出し、ずっしりと重い気持ちが残りました。(でも見て良かった)
「個人事業主」の名目に惹かれ、フリーの宅配ドライバーを始めたリッキーは、訪問介護士をしている妻の車を売り、配達用のバンを買う。今度こそマイホームの夢が叶う、と張り切っていたが、本部からあてがわれた端末に従い、山のような荷物をさばくのは至難の技。体調を崩しても代理を自分で探さなければならず、日曜日に娘に手伝ってもらうことも許されない。がんじがらめの日々に、16歳の息子と12歳の娘は寂しさを募らせる。
(中略)
脚本家のポール・ラヴァティは、何度も宅配便の駐車場に通い、口の重いドライバーたちから本音や状況を聞き出して脚本に織り込んでいった。
何のために働くのか、働き方改革のしわ寄せはどこに行くのか。ケン・ローチ監督が放つイギリスの労働問題と家族の悩みは、日本人の我々にもすっぽりあてはまる。
原題は不在配達票に書かれた文言だが、両親との時間を削られた、子供達の寂しさも強調している。
(東座のホームページより)
昨年の参議院選挙のとき、山本太郎さんの「れいわ新選組」から立候補した元コンビニオーナーの三井義文さんのスピーチを思い出しました。
仲間のコンビニオーナーが、過酷な状況に耐え兼ね、その前日に命を絶ったというものでした。
映画の主人公リッキーも家族のために、と身を粉にして働き、怪我をしてもハンドルを握って仕事に行こうとする・・・
大切なものを守りたい・・・そのために大切なものを犠牲にしなければならない・・・
出口が見えないようで、重い気持ちになります。
それが今の日本にも「すっぽりあてはまる」!・・・本当に。
原題は 「Sorry We Missed You」。宅配の人が留守宅に残すrメッセージだそうです。