伊藤ルイさんの言葉
きのうのミュージカルの余韻が残っているせいか?以前知人に教えてもらった伊藤ルイさんというかたの文章を思い出し、さがしてみました。
「鳥の囀り」という題です。1983年に書かれたものだそうです。
・・・・・ここから・・・・・
人はその発生の時機に一千万年後の、現在の人間のありようを予感して、
自然を美しいと観る心をわが身に具えつけて発生したのではあるまいか。
(略)
高校生に聞かれたことがある。「戦争はなぜ悪いか」と。
戦争の悪は、戦争という恐ろしい状況が終わったあとも、
永くながく人間の心に荒廃の後遺症を残す。
人を殺すこと、自然を破壊することへの恐れをなくしてしまう。
そしてその線上に新しい戦争が用意される。
いま、人類の歩いている道は、全地球滅亡への道かもしれない。
花を見よう。樹々の梢を見よう。川の流れを見よう。
人と人との相交わすほほえみを見よう。
せせらぎに耳を傾け、鳥の囀りを聴こう。
私たち人類が自然の美しさ、愛らしさ、激しさにこころを寄せることができるのは、
全地球滅亡の危機を、自然を愛する優しい人間の心だけが防ぎ得ると
「ひと」発生の時機にそれを叡智として獲得したからではなかったのか。
今後一千万年、二千万年の後までも人間が、花を愛し、鳥の囀りを愛する
人として生き続け得る歴史を、あらためていまこそ築き上げよう。