「娘は戦場で生まれた」
「最高の花婿アンコール」と同じ日に、東座で見ました。
シリアという国がたいへんなことになっているらしい、ということはなんとなくニュースなどで聞いたことがありましたが・・・
最初はまだ平和に学生や市民が民主化を求めてデモをしている頃から、学生だったワアドさんが自分のカメラで周囲の状況をとらえたものです。
彼女たちが求めているのは人間として当然の自由や民主主義なのに、独裁政権による弾圧はどんどん激しくなり追い詰められていく。
あまりの臨場感で、まるで映画を見ている自分たちもその中にいるような緊迫感で迫ってきます。
その中でもささやかに結婚式を行い、妊娠を喜び、かわいい赤ちゃんが生まれ、その赤ちゃんをなんとしても守りたいという思い、でもいつ自分たちも爆撃にあって死ぬかもしれないという恐怖、この映像は娘への遺言と思って撮り続けたそうです。
見ていてこの映画はどうなって終わるのだろう・・・あまりにも救いがない
でも、この映画ができた、ということは撮影者が生きていたか、生きている人に託すことはできたのだろう・・・そんなことまで思って見ていました。
日常生活の中で、爆弾がすぐそばに落ち、身内や友達が血まみれになって死んでいくという体験・・・どこかで聞いたようなと思ったら、沖縄戦のことでした。鉄の雨、鉄の暴風雨と、語り継がれている沖縄も、明日どころか次の瞬間の命もわからない、というこのシリアの状況の人々と重なりました・・・
ただシリアのこの母子は子どもをどんなことがあっても守り抜くと思うことができた・・・
「声をあげたら殺せ」などと言われ追い詰められていったとしたら・・・
観終わって、しばらくは言葉が出ませんでした。知らなくてはいけないこと、世界中にたくさんあるんだな。もうシリアと聞いたら、どこか遠い国のことではなく、「サマちゃんの国」と思うと思います。